約2年ほど前、近所の内科が閉院した。
先生1人・ベテランの看護師さん1人・受付1人しかいない小さな内科で、まさに地元住民のかかりつけ医だった。
私も幼少期から大変お世話になり、風邪を引いた時はもちろんのこと
・薬用石鹸ミューズの使い過ぎで手の皮ほぼ全域が剥がれた時(3~4歳)
・サイズの合わない靴を履き続けて左足の親指が腐りかけた時(19~20歳)
・動悸と吐き気で仕事へ行けなくなった時(23~24歳)
など、約四半世紀の中で起こった人生のあらゆる危機から私を救ってくれた。
閉院が決まったのは突然で、理由は先生の体調不良とのこと。
おそらく脳梗塞を患っているらしく、日常生活を送るには問題ないが診察ができない状態となってしまったそうだ。
ここ数年、風邪を引くことがほとんどなかったので突然の閉院で困ることはなかったが、心にぽっかりと穴が開いた。
家から徒歩5分、いや、信号に引っかからなければ3分で着く場所に信頼できる先生がいるというのは心強かった。
私にとってこの内科はコンビニ的な存在、まさに「すぐ・そこ・サンクス」である。
そんな割と健康だった私にも、黒い影が忍び寄る。
8月に入ってから仕事が忙しくなってきて、動悸・吐き気・胃痛などの症状が出てきてしまった。
あと結構深刻なのは、夜なかなか寝付けなくなってしまったということだ。
昔から夜更かししがちで寝付き・睡眠の質はあまり良くなく、4~5時間寝れば満足していた。(満足の閾値が高すぎる)
最近は平日働いてめちゃくちゃ疲れているはずなのに布団に入った途端寝られなくなってしまい、入眠までに短くて30分、長いと2時間くらいかかってしまうようになってしまった。
さすがにこれはまずいと思い、不眠症外来的なところへ行こうと考えた。
「○○区(住んでいるところ) 不眠症」で検索し、一番上に出てきた内科のホームページへアクセスする。
内科だったら動悸や吐き気の相談もできて一石二鳥、いや、五鳥くらいだろうか。
あとはどんな先生か分かれば、なお安心だと思った。
ホームページを見ると「院長ブログ」なるものがあり、主に院内勉強会の内容や季節ごとに増える症状・病気(花粉症・熱中症など)について更新がされている。
ブログの冒頭部分には最近買ったもの・行った場所など、先生のプライベートが垣間見えることも書いてあり、なんだか穏やかな気持ちになる。
先生の誕生日には毎年スタッフの方がケーキを用意しているみたいで、それについても投稿されていた。
なんとそのケーキには先生の顔写真がプリントされていたようで「びっくりしました」的なことが書いてあったのだが、さらに続けてこう書いてあった。
「とっても、とっても嬉しかったです。」(原文ママ)
こんな穏やかな文章を書いておいて不親切なわけがないと思った。
だって、「とっても嬉しかったです。」だけでも十分温かみを感じるのに、さらにその前に「とっても、」を付けるなんて。もはや温か過ぎて火傷してしまう。
同じブロガーとして学ばせていただきました。精進してまいります。
そして私は「不親切なわけがない」と書いたが、それにはちゃんと理由がある。
数年前、唇・首・手に謎の湿疹ができて皮膚科を受診した。
とは言っても特にかかりつけの皮膚科がなかったため、この時も家の近くの良さげな皮膚科をネットで検索した。
地域密着の小さな医院ほど、先生ががんばってブログを投稿しているような印象がある。
ブログから見るに、とても人当たりのよさそうな女性の先生がやっている皮膚科へ行ってみることにした。
しかしこれが悲劇の始まりだった。
診察室に入るとブログに載せていた笑顔の写真が信じられないほどの無表情な先生の顔。そして言葉を交わさずとも分かる気の強さ。
あれ、ブログに「新しいタンブラー買いました~」ってめっちゃ笑顔の自撮り載せてなかったっけ…?
一通り症状を伝え、また唇の湿疹はヘルペスかもしれないと伝えたところヘルペスの検査をしてくれることになった。
その検査方法が唇の水泡を潰すというものだったのだが、想像していただきたい。
めちゃくちゃ痛ぇんだわ
ただでさえ湿疹が出来ている状態の唇はピリピリ、いや、ビリビリして塩気の強いものを食べるのもかなりつらい。
しかし、無表情の女医は水泡を容赦なく潰した。これもまた無表情で。
検査結果は驚くほどすぐに出た。2~3分だろうか。
女医は「ヘルペスではありませんでした」と言い放った。もちろん無表情で、だ。
「水泡を潰すという行為」があまりにも報われなさすぎる結果ではないか。
私は終始、ガキの使いを卒業する山崎邦正と同じ表情をしていた。(以下参照)
その上、なんかめちゃくちゃ効き目なさそうな軟膏を処方されて終わった。
軟膏は効かなかった。唇・首・手に塗ったけど全然効かなかった。まじで。
結局別の皮膚科で診てもらい、それぞれの部位に効き目のある軟膏をもらって無事完治した。
初診だから雑な扱いを受けたのだろうか。でもその別の皮膚科も初診だったけどちゃんと見てくれたしなぁ…。
そんなことがあり、すっかり初診恐怖症となってしまった。だから内科の閉院にも緊張感が走った。
皮膚科ならまだしも、内科って生活の中で結構重要かと。大概の体調不良は内科へ行けば解決すると思うからだ。
そしてあのクソ皮膚科で学んだのは、ブログの印象に騙されてはいけないということ。
だいたい、文章と写真なんていくらでも情報操作できるじゃないか。騙すより騙される方が悪い。いや、悪い?なんで被害者なのに泣き寝入りしなければならないのか。印象が違うのは百歩譲っていいけど、あんなに繁盛してるのに初診と再診で患者への態度違ったら俺は許さねぇからな…覚えとけよ…
もうこれ以上書くと収拾つかないのでこのあたりで。(根に持ちすぎ)
今まで以上に安心して通える内科が見つかるのか、そんな不安を抱えつつ新しい場所へ飛び込んだ。
問診表の症状の欄に「動悸・吐き気・気持ち悪さ・夜なかなか寝付けない」と記入し、診察を待つ。
待合室の広さにはそぐわないバカでかいアナウンスが響き渡り、私はビクッとして診察室のドアを開けた。
挨拶をし、ついに診察へ…
「なんかいっぱい書いてあるけど、いつからこうなっちゃったの~?」
語尾こそ違うが話し方のトーンに系統があるなら、先生は孫悟空と同じところにカテゴライズされると思う。
この感じでいい加減なこと言われたら私は立ち直れない。人を信じることすら怖くなってしまう。
問診表に書いたことをベースに現在の症状を伝える。先生は私の話をちゃんと聞いてくれて、さらに質問をした。
「お腹の調子はどうだい?」
「頭痛はあるかい?」
まず「~だい?」とか「~かい?」を日常会話でナチュラルに使うんだという驚きがあったが、もう一つ驚いたことがある。
主訴だけでなく、患者本人が伝えていない症状がないか聞いてくれたことだ。
ずっと通っていた医院では私が伝えた症状を治すための薬を処方してくれていた。
しかしここは頭痛や過敏性腸症候群(IBS)の特殊外来の診察もやっているため、私の症状から他にも発生していそうな症状を聞いてくれたのだと思う。
先生のおっしゃる通り、私は頭痛・胃腸系の調子の悪さに悩まされている。
結局、不眠症治療薬・胃薬・頭痛薬を処方してもらうことになった。
しかも私が処方してもらった薬は全て、会計時に受け取ることができ別途薬局へ行く必要がない。ここもポイントが高い。(薬局で処方だとしても同じビルの中にあるので鬼近い)
薬を飲み始めてからは、一旦仕事の忙しさが落ち着いたこともあり調子が良くなった。
何より、夜寝付けるようになったのはでかい。これで安心して寝られる。
薬の副作用で困っているということもなく、今のところ安心して服用できている。
初診恐怖症が少し克服された。この内科は間違いない。
他にも来院予約可・初診からオンライン診察可・キャッシュレス決済可など、かなり対応力の高いクリニックだ。
長年知らないふりをしていたが、日々繰り返される下痢と便秘。おそらく私は過敏性腸症候群(IBS)だ。いざ治療するとなった時もここへ行けばいい。
家からだと2駅ほど離れているため、発熱時以外の体調不良はここに駆け込むつもりだ。周りの人にもおすすめしたくなる。
とはいえ、内科へ通わなくても健康でいられるよう日々努めたい。
丁寧な診察をしてくださって、とっても、とっても嬉しかったです。